図3(b)では電流不連続モードではtonを一定にした場合と、tonを可変(制御)して出力電圧を15V一定にした場合の2種類のリップル含有率を示しています。
図3(b)から出力電圧を一定に保った場合(赤線)はton固定の場合(黒線)より若干悪化しますが“悪化”とはあくまでもton固定のモードに対しての悪化です。
チョーク電流不連続モード時のリップル電圧含有率は両者とも連続モード時より減少していますからチョーク電流不連続モード時のリップル電圧は実機において問題になることはほとんどありません。
今回は前回の考え方を拡張してステップアップ形DC/DCコンバーターのチョーク電流不連続時のリップル電圧の求め方について説明しました。
負荷電流対リップル含有率を電流連続モードから不連続域まで見てみると負荷電流に比例してリップル含有率(≒リップル電圧)は変動することが分かりました。
今回でステップアップ形DC/DCコンバーターの説明は終了し、次回からは入力電圧と異なる極性の出力電圧を得られる反転形DC/DCコンバーターについて説明します。
この極性反転形のコンバーターは電池動作の機器で負電位が必要な箇所に用いられます。
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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