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Quad SPIフラッシュメモリの使用上の注意Q&Aで学ぶマイコン講座(105)(3/3 ページ)

» 2025年07月17日 10時00分 公開
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コマンド期間とステータス応答期間の境界に注意

 注意が必要なのは、入力と出力が切り替わるコマンド期間とステータス応答期間の境界です。入力と出力の役割が表1に示す通り切り替わります。

表1
コマンド期間 ステータス応答期間
出力 マイコン Quad SPIフラッシュメモリ
入力 Quad SPIフラッシュメモリ マイコン

 Quad SPIフラッシュメモリは入力から出力へすぐに切り替わりますが、マイコンのQuad SPI、Octo SPIインタフェースの仕様によっては出力から入力への切り替わりに1サイクル必要な場合があります。この切り替わりの期間に、マイコンのQuad SPIインタフェースのIO信号線とQuad SPIフラッシュメモリのIO信号線が、どちらも出力として動作します。そのため、例えば、マイコン側がLOW出力になり、Quad SPIフラッシュメモリ側がHIGH出力になると、IO信号線上で短絡が発生し、大きな電流が流れてしまいます。

 図3がそうなった場合の実際の波形です。

<strong>図3:QPIモードで実際にトラブルが発生した時の波形</strong> 図3:QPIモードで実際にトラブルが発生した時の波形[クリックで拡大]

 図3の青色の信号がSIO2、赤色の信号がSIO3、橙色の信号がSIO3信号線を電流プローブで計測した波形です。橙色の信号は、Quad SPIフラッシュメモリ側を+、マイコン側を-、としており、Quad SPIフラッシュメモリからマイコンへ流れる電流(マイコンへのシンク電流)を計測しています。

 マイコンがQuad SPIインタフェースのIO信号線を出力から入力に切り替える期間で、マイコン側がLOWを出力し、Quad SPIフラッシュメモリ側がHIGHを出力して短絡が発生しています。その結果、本来HIGHレベルになるはずの期間が短絡によって中間電位となり、また、マイコン側へ20mA近い電流が流れています。こういった事態が起きないように、マイコン側のQuad SPI、Octo SPIインタフェースの仕様を事前に確認し、Quad SPIフラッシュメモリのQPIモードと相性がよくない場合はQPIモードの使用を控える、という判断が必要です。

 マイコンのQuad SPI、Octo SPIインタフェースの仕様で、出力から入力に切り替わるのに1サイクルかかる場合でも、QPIモードのようにコマンド期間から複数のIO信号線を同時に使用するモードを使いたい場合は、Quad SPIフラッシュメモリではなく、Octo SPIフラッシュメモリの使用をおすすめします。

 図4は、Octo SPIフラッシュメモリのOPIモードでのRDSRコマンド通信波形図です。Quad SPIフラッシュのQPIモードとは異なり、Octo SPIフラッシュのOPIモードの場合は、コマンド期間とステータス応答期間の間にダミーサイクル期間があり、マイコンがOcto SPIインタフェースのIO信号線を出力から入力に切り替えるための猶予期間があるため、Quad SPIフラッシュのQPIモードで発生するトラブルを回避できます。

<strong>図4:Octo SPIフラッシュメモリ RDSRコマンド通信(STR-OPI Mode)</strong> 図4:Octo SPIフラッシュメモリ RDSRコマンド通信(STR-OPI Mode)[クリックで拡大]

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