注意が必要なのは、入力と出力が切り替わるコマンド期間とステータス応答期間の境界です。入力と出力の役割が表1に示す通り切り替わります。
| コマンド期間 | ステータス応答期間 | |
|---|---|---|
| 出力 | マイコン | Quad SPIフラッシュメモリ |
| 入力 | Quad SPIフラッシュメモリ | マイコン |
Quad SPIフラッシュメモリは入力から出力へすぐに切り替わりますが、マイコンのQuad SPI、Octo SPIインタフェースの仕様によっては出力から入力への切り替わりに1サイクル必要な場合があります。この切り替わりの期間に、マイコンのQuad SPIインタフェースのIO信号線とQuad SPIフラッシュメモリのIO信号線が、どちらも出力として動作します。そのため、例えば、マイコン側がLOW出力になり、Quad SPIフラッシュメモリ側がHIGH出力になると、IO信号線上で短絡が発生し、大きな電流が流れてしまいます。
図3がそうなった場合の実際の波形です。
図3の青色の信号がSIO2、赤色の信号がSIO3、橙色の信号がSIO3信号線を電流プローブで計測した波形です。橙色の信号は、Quad SPIフラッシュメモリ側を+、マイコン側を-、としており、Quad SPIフラッシュメモリからマイコンへ流れる電流(マイコンへのシンク電流)を計測しています。
マイコンがQuad SPIインタフェースのIO信号線を出力から入力に切り替える期間で、マイコン側がLOWを出力し、Quad SPIフラッシュメモリ側がHIGHを出力して短絡が発生しています。その結果、本来HIGHレベルになるはずの期間が短絡によって中間電位となり、また、マイコン側へ20mA近い電流が流れています。こういった事態が起きないように、マイコン側のQuad SPI、Octo SPIインタフェースの仕様を事前に確認し、Quad SPIフラッシュメモリのQPIモードと相性がよくない場合はQPIモードの使用を控える、という判断が必要です。
マイコンのQuad SPI、Octo SPIインタフェースの仕様で、出力から入力に切り替わるのに1サイクルかかる場合でも、QPIモードのようにコマンド期間から複数のIO信号線を同時に使用するモードを使いたい場合は、Quad SPIフラッシュメモリではなく、Octo SPIフラッシュメモリの使用をおすすめします。
図4は、Octo SPIフラッシュメモリのOPIモードでのRDSRコマンド通信波形図です。Quad SPIフラッシュのQPIモードとは異なり、Octo SPIフラッシュのOPIモードの場合は、コマンド期間とステータス応答期間の間にダミーサイクル期間があり、マイコンがOcto SPIインタフェースのIO信号線を出力から入力に切り替えるための猶予期間があるため、Quad SPIフラッシュのQPIモードで発生するトラブルを回避できます。
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