測定結果は、「−23.7V」だったので「センター(−)」であり、メーカーの回答と一致した。
しかし、困ったことになった。それは前述したように表示灯はNPN型が多く使われている可能性が高く、NPN型ではソケットは「センター(−)」である。しかし、DC仕様のLED電球の極性は「センター(+)」でありNPN型の表示灯は「センター(−)」で極性が一致しない。表示灯メーカーのパトライトへ推奨するLED電球はないか問い合わせてみたが、“推奨のLED電球はございません”とあっさり断られた。
依頼があった顧客へLED電球の調査結果を報告し、無極性のAC仕様のLED電球を採用するようにアドバイスしたが、AC仕様ではLED電球の価格が上がるため、なかなか納得してもらえなかった。
やむを得ずLED電球メーカーへ評価用に「センター(−)」の特注対応の問い合わせを行ったら、以下の回答があった。
このLED電球は、中国工場にてのOEM ロット生産品でございます。特注対応は最低生産数量単位が1000個ロットになり、少数の場合は不可でございます
これもあっさりと断られた。
このような状況であり、なかなか顧客が希望するような結果は得られなかった。古い設備を維持するため、いろいろな調査や確認を行っているが、古い装置では情報の壁が厚く、スムーズなサポートは困難な状況である。古い設備の部品情報を共有するネットワークの構築が望まれる。
今までは古い装置サポートの難しい面の例を説明した。しかし、視点を変えれば今こそ中古ビジネスの好機である。それは設備需要と人材活用の2つの利点があるからだ。
設備需要は、新規設備の導入が予算的に難しく中古設備の購入や古い部品の修理で対応せざるを得ない。半導体を生産するには最新の設備ではなく、昔から使い慣れている古い設備で十分である。古い設備であれば安価に購入できるし、予算も少額であれば何とか確保できる。
人材活用では、20年ほど前の設備や部品を設計、製造した人の年齢が60歳前後の定年の時期に達したからだ。これらの人材は企業ではあまり活用されていないが、65歳定年延長が法制化された今、この人材を活用する知恵が各企業に求められている。中古ビジネスの需要が増加し、ベテランの人材供給が可能になったのが今である。
この好機をうまく使い半導体や電機機器メーカーと部品供給のメーカーが協力して現状を少しずつ改善していくことが日本の将来につながり日本経済も徐々に活性化するだろう。
部品メーカーはその部品を使った設備が稼働している以上、本来は古い設備をサポートする責任がある。しかし古い部品を何十年もサポートし続けることは確かに経済的には無駄である。それならサポートを中止した時点でその部品の情報開示を行えば、サポート業務は部品メーカーから離れて、中古業者や修理業者へ移る。また古い部品のサポートの仕事には、その部品を知っている60歳を超えたベテランエンジニアが活用され、65歳定年制となった現在では新たなビジネスモデルも生まれるだろう。
今の日本はかつての“大量生産、大量消費の時代”から、古い設備を長く使う“節約の時代”に変わった。時代にマッチしたビジネスルールやビジネスモデルの構築が望まれる。
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