そして依頼主から、入力がオープンになっている端子を0Vもしくは12Vに接続する許可をもらった。入力処理した基板を図6に示す。
オープン端子の処理後に12V電源を投入したら消費電流が80mAから20mA減り、60mAになった。やはり入力オープンのCMOSロジックICの出力に貫通電流が流れていた。
最初に説明したトランジスタアレイの使い方では電源電圧が低いと出荷後に動作不良が出ることが予想されるので、電源電圧をちょっと上げて12V電源の上限の+10%の13.2Vに調整してもらった。これで少しは不具合が減るだろう。
なぜ、このような2つの初歩的な設計ミスがあったのだろうか。恐らく納期が短く、開発した機器が動けば良いという考えで製造され、設計者自身がハードウェアの動作確認を行っていなかったと思われる。確かに、開発担当者には十分な時間が与えられず、動けば良いという評価しかできない場合もあるだろう。しかし、品質保証や量産設計の担当者がこれをカバーしてより良い製品作りを行うべきだ。今回の問題点は、現在の開発業務にも適用すべきだと思った。
その後、この温調器を製造したメーカーが判明したのだが、2010年に倒産していた。倒産にはいろいろな要因があったとは思うが、こんなに低レベルの設計ミスがある製品では多数の不具合が発生したに違いない。その結果、顧客の信頼をなくしてしまい、不具合処理で赤字になって会社を維持できなくなったのではないかと思えてしまう。
筆者も30年ほど前に製造装置の設計に携わったことがあるが、当時の製品は部品や回路の設計品質がかなり悪かった。転職したばかりだったが以前の量産設計の経験を生かして、全面的に装置の回路設計や部品の改善を行い、不具合を撲滅させた記憶がある。その結果、装置の製品品質が大幅に改善され製品の不具合が激減し、顧客の信頼を得ることができた。さらにその後のビジネスの拡大につながった。この経験からも、良い品質の製品を作ることこそ、企業が生き残る必要条件だと確信している。
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