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FAN(3) ―― ファンの使用上の注意事項中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(21)(3/3 ページ)

» 2018年07月30日 10時00分 公開
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その他の注意事項

 ファンモーターを正しく使用するには、

定格電圧/使用電圧範囲/消費電流(定格電流)/消費電力を正しく設定し、

回転速度/最大風量/最大静圧を必要とする放熱量と比較し、

回転方向/吐き出し方向を確認(図6

することがキーポイントとなります。

取り付けの注意事項

図6:旋回流の影響
図7:リブなしハウジングの損傷

 吹きつけ型ファンの近傍に温度センサーなど温度に敏感な部品を配置するとファンの羽根の回転方向によって誤動作する場合があります。
 図5に示すようにプロペラファンの吐き出し側の流速パターンはプロペラ径と同程度までは旋回流としてのパターンを描きます。つまり空気の流れはファンの出口から直線的に流出するのではなく、この範囲の中ではネジれて流れていますのでプロペラの右回転/左回転の影響を受けます。
 図6(a)では図中の部品に空気が吹きつけるような流れになりますので放熱効果が増加しますが、図6(b)では気圧が下がるような流れになりますので放熱効果が悪化します。
 回転方向までうたってあるカタログはめったになく、単なるP-Q特性からでは判別できないので実際にファンを入手して確認する必要があります。

フランジの構造
 図7(a)のようなリブレスのフランジのファンを機器に取り付ける場合、作業がやりにくいからといって図7(b)のように上下のフランジを貫通するビスで正面から取り付けるとフランジの内側付け根近辺に過大応力が発生してフランジを損傷します。結果としてファンの脱落事故にもなりかねませんので図7(c)に示すように応力の発生しないフランジのみを取り付けてください。どうしても正面からしか作業ができない場合はリブ付きフランジ構造を選んでください。

過熱保護装置
 機器の安全器試験にはファンロック試験に代表されるようなファンの異常に対する確認試験があります。簡単にはファンがロックした事を検出するファンのアラート機能を使って機器を停止させる方法がありますがこの方法では換気口の目詰まりに対する過熱保護が働きません。
 過熱保護とファンロックは別のモードですので要求される品質によっては図5に示すような流量を検知する過熱検知機能が必要になる場合があります。

ファンの負荷電流にはモーターの極数と回転数に応じた数百ヘルツのリップルを含みます。ファンがつながれた電源回路の平滑キャパシターの容量が少ない場合は十分にリップル電流をバイパスすることができずにリップル電圧が増加する場合があります。

ファンを低騒音化のために−10〜−20%の減電圧で動作させる場合には起動電圧を確認してください。回転中の動作電圧と起動時の最低電圧には差があります。

高周波の放射環境下で使用するとファンの電源ラインからのノイズ混入や電磁誘導で軸受ベアリングに高周波電流が流れ、ベアリングが異常摩耗する場合があります。

MIL-HDBK-217Fによればモーターのベアリングは25%以上のすべり率で使用すると故障モードが変わるとされていますので実機での回転数も確認します。ファンの場合はN-Q特性として表わされていますが実機でのQ(風量)が分かりませんので反射型のタコメーターなどで実機の回転数を直接測定し、自由空間(無負荷)の回転数と比較しますが。

ファンは摩耗型の故障率特性を持つ部品です。故障する箇所としては巻き線、制御回路、軸受け部、などがありますがいずれも動作温度が左右するパラメーターです。
 温度寿命特性はメーカーから入手し、実機の使用条件と比較して必要な寿命時間を満足するかを判断します。
 中でも軸受けの寿命は回転数の累計に影響されますので低速回転(減電圧)で使用することは空気の流速低下による低騒音化と併せて効果的な対策となります。さらには長寿命品に変更するなどの対策を採ります。

ファンはULなどの安全規格認定品の製品があります。認定が取れていない場合にはファンの内部についても適合試験が行われますので市場での安全規格の認定を得たものを使用してください。

 今回でファンについては終了し、次回からは接点を有する部品について説明していきます。

執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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