図7は電解コンデンサーの実装面を拡大したものだ。電解コンデンサー直下のパターンが切れ、電源を短絡したようだ。ガラスエポキシの基板の素材が黒く焼けていた。漏れた電解液が電源の端子を短絡し、過熱されたガラス繊維も焼けたようだ。
基板に実装された6個の電解コンデンサーを外して電気的な特性を確認したが、燃えた電解コンデンサーも含めてほとんど劣化しておらず、液漏れの初期の段階だった。基板上に広がった電解液を取り除くため水洗いしてブラシでこすって、その後ドライヤーで基板を乾燥させた。基板上に電解液の臭いは少し残っているが、もう大丈夫だろう。
焼けた電解コンデンサーは新品へ交換し、残りの5個は元々、実装された部品を実装した。通電してペダルやモーターの動作を確認したが、正常に回転数が上がった。消費電力は最大でも8W程度だった。もちろん部品が焼ける臭いは発生しなかった。これで修理は大丈夫だ。
日本国内のパターン設計や部品の実装基準をJEITAが定めている。その基準には『電解コンデンサーの下にパターンを引かない』ようにとあり、国内のメーカーはこれを順守している場合がほとんどだろう。国内のあるメーカーの設計基準を一部引用する。
コンデンサーの封口部の下には、回路パターンを配線しないでください。万が一電解液が漏れたとき、回路パターンを短絡させる恐れがあります。コンデンサーの周辺および、プリント配線板の裏面(コンデンサーの下)への発熱部品の配置は避けてください
と明記されている。残念ながら今回修理した機器では守られていなかった。
これまでの経験上、海外のメーカーにはこの技術基準はないように感じている。電解コンデンサーの直下にもパターンが引かれ、スルーホールがある製品を修理時に時々見かける。これがテレビなどの電気製品から発火し火災を引き起こす要因になっていると思われる。
その後、修理品のメーカーを確認したところ、残念ながら国内製品だった。念のためにメーカーのWebサイトから基板が焼損したという事実を伝えてみたが、何も返答はなかった。販売会社も分かったので、調べてみたが2019年の5月に閉鎖していた。基本設計の基準が守られないと、製品の不具合や焼損事故が発生する。その結果、会社の経営も厳しくなると感じた。
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