これまでに述べたツールフローの最低コストを見積もると、各ツールの1ライセンスを得るだけで合計100万米ドルから300万米ドルになる。例えば、Blaze DFM社のツールは、1年間のサイトライセンス料が200万米ドルである。しかしファウンドリによれば、ツールにかかる費用は誇張されるものだ。例えば、Ng氏は、「シグナルインテグリティ技術が登場したときもそうしたうわさが飛び交い、コストをかけてでもツールを刷新すべきだというようなアピールがなされたが、最終的にはベンダーがこの技術をEDAツール群に組み込んでしまった」と指摘する。「今いわれている機能のいくつかも同じ運命をたどるだろう。ベンダーは既存のツールにそれらの機能を組み込んでしまうに違いない。さらにいえば、ベンダーの整理統合が起こるのは明らかだ。DFM企業の中には、大規模な統合ソリューションと連携せずに独立してやっていくことが困難になる企業もあるだろう」。
UMC社のLin氏は、「DFMツールの一部はこれからますます重要な役割を果たすようになり、場合によっては、ユーザーは従来の90nmフローで用いていたツールに加えてこれらのツールを購入しなくてはならないだろう」と指摘する。しかし同氏は、「一部の機能は既存のツールで吸収できるだろうし、当社はこうした問題の一部をファウンドリで解決するつもりである」とも述べている。「当社は設計者にすべての負担を押し付けるようなことはしない。しかし、その一部を負担してもらうことにはある程度のメリットがある。当社がファウンドリ側の立場から問題の低減に取り組み、情報を設計者に提供することで、設計者はフローをうまく利用することができる。恐れる必要はない。従来のフローにアドオンしたもので、基本的な部分に変わりはないということを強調したい。設計者がしなくてはいけないことは決して多くない」とLin氏は語る。例えばCMPの場合、設計者はSSTAを実行するためにファウンドリからそのための技術ファイルを入手することがこれまでと大きく違う点だ。
電力効率やタイミングなどに関するほかのEDA技術と同様に、DFMもその位置を確立した。今後EDAベンダーは設計者がフローの初期段階で製造上の問題点の有無を検証できるような技術を提供してくるだろう。その範囲は、例えばフロアプランニングやRTL(register transfer level)の領域にも及ぶと思われる。correct by construction手法により、IPコアと基本要素をDFMに適合させることが今後必要となってくる。
DFMは問題を解決するための手段であり、少なくとも65nm/45nmプロセスノードでは、EDA業界の成長機会ととらえるだろう。ほとんどのベンダーは、65nmプロセスノードのDFMで今は「あれば望ましい」と考えられている機能が、45nmプロセスノード以降になると「必須の」機能になっているだろうという意見に同意する。標準的なツールフローにDFMに対応したEDA技術の大半が吸収されるかどうか、そしてEDAベンダーが難しいDFMの問題をほぼ解決できるツールを提供できるかどうかを見ていくのは面白いだろう。さらに、ファウンドリが製造上の課題の多くを克服できるかどうかも興味深い。それができれば、設計者がファウンドリの欠点を補うために余分な作業をしなくても、DFMをよりどころにパフォーマンス、電力効率、歩留りを向上させることが可能になる。
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