試作したLED照明は、実際に利用する前に、きちんと動作することを確認するための試験を実施する必要がある。組み立てを終えた後で、LED照明にいきなりAC100Vを印加すると、接続ミスや部品ミスが存在する場合に基板の焼損や部品の破裂が発生してしまい、せっかく製作したものが無駄になりかねない。
今回はまず、前回紹介した無効電力を有効利用するLED照明に初めてAC100Vを接続する前に行うべき動作試験について説明する。続けて、このLED照明にセンサーなどを追加した応用例について報告する。なお、このLED照明は、非絶縁のAC100Vを電源として使用する。このため、電源焼損と漏電には十分な注意を払う必要がある。
試作したLED照明は、実際に利用する前に、きちんと動作することを確認するための試験を実施する必要がある。組み立てを終えた後で、LED照明にいきなりAC100Vを印加すると、接続ミスや部品ミスが存在する場合に基板の焼損や部品の破裂が発生してしまい、せっかく製作したものが無駄になりかねない。特にDC電源が短絡すると、前回の記事の図1において、FETのQ2が短絡破損するとともに、コンデンサC2も破裂してしまい、抵抗R5の焼損などが発生する。
動作試験は、以下の手順で進める。
(1)AC端子が短絡していないことをマルチメーターで確認する
(2)直流電源とLED照明の電源回路を接続する。このとき、直流電源の出力電圧は40V、出力電流は100mA程度に調節する
(3)直流電源から出力する電圧を35V程度に変更する。このとき、可変抵抗VR1の抵抗値を上げた場合にLED照明が暗くなり、逆に下げた場合にはLED照明が明るくなることを確認する
ここまでで問題が無ければ、内部接続の不具合がほぼ存在しないので、AC100Vを接続できる。
(4)AC100Vを接続した上で、可変抵抗VR1を調整してLED照明の電源電圧が40〜45Vの範囲で適度な明るさに設定する
これらの手順を踏むことによって、LED照明を安全に利用できることを確認できる。
試作したLED照明を、市販のセンサーライトに用いられている150Wの白熱電球と取り替えた時に興味深い現象が起きたので報告しておこう。なお、白熱電球のE26ソケットにはLED照明を試作する際に用いたACプラグをそのまま取り付けることはできない。このため、E26ソケットにACプラグを接続するための昔懐かしいアダプタが必要だった。このアダプタは現在でもホームセンターで販売されている。
白熱電球に替えてLED照明を取り付けた時、その現象は起った。センサーライトのスイッチがオフになった時、LED照明は消灯した状態になっていなければならないのに、実際にはわずかに点灯していたのだ。この現象を見て「へぇー」と納得された方は、知識と経験が豊富なエレクトロニクス技術者であろう。筆者もすぐに合点した。
白熱電球は、消灯時と点灯時のフィラメントの抵抗値が大きく異なっている。150W品の抵抗値を単純計算すると100V/1.5A=67Ωの抵抗になる。しかし、実測すると6Ω程度しかない。この差はフィラメントに用いられているタングステンの抵抗温度係数(約0.5%/℃)と点灯時の内部温度(約2000℃)の影響を鑑みれば、理論値と実測値が合致することを理解できる。この計算と、常温で測定したフィラメントの抵抗値の差の意味をつかめば、白熱電球のことを深く理解できるようになるだろう。逆に、常温での白熱電球の抵抗値から白熱電球のおおよその電力が計算できるようにもなる。フィラメントの抵抗値の概略計算式は、以下の通りである。
点灯時の抵抗=消灯時の抵抗×(点灯時の温度×抵抗温度係数+1)
さて、センサーライトは、夜間にその付近を人が通るたびに30秒程度点灯するという仕様になっているので、その分だけ点灯回数が多くなる。白熱電球が冷えた状態から白熱電球を点灯すると、フィラメントの抵抗値は消灯時のものになる。この低い抵抗値により、点灯開始時には大きなラッシュ電流が流れる。点灯/消灯を頻繁に繰り返すと、ラッシュ電流によって白熱電球の寿命が短くなってしまう。このため、センサーライトでは、消灯時に白熱電球を予熱するブリーダ抵抗を付けて、常時10W程度の電力で暖めておき、ラッシュ電流が小さくなるような仕組みを備えていた。この余熱の電力によって、センサーオフ時にLED照明がわずかに点灯してしまっていたのだ。
ここからは、LED照明回路の応用例について紹介しよう。
図1の回路図は、無効電力を有効利用するLED照明の回路内に、周辺の明るさに合わせて照明をオン/オフするセンサーを追加したものである。この回路を用いることで、夕方に暗くなるとLED照明が点灯し、朝方に明るくなると消灯するオートライトを実現できる。図1では、左側中央部の破線の位置にフォトトランジスタQ4と抵抗R13を追加している。周囲が明るい時はフォトトランジスタであるQ4がオンになるので、FETのQ2に印加されるゲート電圧が下がってQ2がオフになり、LED照明は消灯する。一方、周囲が暗くなるとQ4がオフになるので、Q2がオンになって、LED照明は点灯する。周囲の明るさの微妙な変化に応じてQ4から出力される電流が変わり、それに応じてLED照明の明るさも微妙に変わるのが面白い。R13は、Q4の感度を調整する抵抗である。R13の抵抗値が大きいと少し暗くなっただけでもLED照明が点灯し、抵抗値が小さいとかなり暗くならないと点灯しない。なお、組み立てる際には、Q4をLED照明の光が当たらない位置に設置する必要がある。
図2は、オートライトの製作例である。このオートライトは、12個の白色LED素子を直列で接続したLEDストリングを6本使用している。つまり、LED素子の総数は12×6=72個となる。消費電力は点灯時が3.2W、消灯時がほぼ0Wであった。非常に使い勝手が良いものを製作できたこともあって、筆者は満足して利用している。
次に説明するのは、ドアを開けたらLED照明が点灯し、閉めたら消灯するドア照明の応用例である。これは装置の保守用のライトに使用できる。図1のQ4の位置に、ドアセンサーとなるリードスイッチを取り付けた。ドアが閉まると、マグネットでリードスイッチがオンになるので、Q2に印加されるゲート電圧が低下してオフとなり、LED照明は消灯する。ドアが開くと、マグネットとリードスイッチが離れるので、リードスイッチがオフになってQ2がオンになり、LED照明が点灯する。ドアセンサーには、100円ショップで販売されているたんすライトのリードスイッチとマグネットを流用した。このようにQ2のFETに印加するゲート電圧をうまく操作することで、LED照明の良さを引き出すことができる。
次回は、このLED照明を、研修の一環として学生に製作してもらった結果を報告する。電子回路に関する十分な知識がなくても、簡単に組み立てて動作させられると想定していたが、実際には予想外の問題がいくつか発生した。これらの問題によって判明した、このLED照明回路の課題についても説明する。
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