ローデ・シュワルツは2013年7月18日、テレビなど放送受信機の評価、テストが行える放送基準信号源/放送試験器の新世代製品「R&S BTC」を発表した。世界中のあらゆる放送方式だけでなく、4K/8K対応など次世代放送方式にも対応した他、各放送関連のロゴ認証試験のテストシナリオを人手を介さず完全自動化できるなどの新機能を多数盛り込んだ。
ローデ・シュワルツは、大手電子計測メーカーであるとともに、放送局など向けの放送機器の世界的大手メーカーでもある。「欧州市場における放送の送信機のシェアは60%を超える」(同社)など、日本を含め世界各国で放送機器事業を展開している。
世界的な放送機器事業で蓄積した技術ノウハウを生かし、テレビやレコーダー、ラジオなど放送受信機器の開発に不可欠な放送基準信号源機能などを持つ放送試験器を長く展開する。「放送を受ける機器や部品の開発現場には、少なくとも1台は当社の放送試験器が使われているといっても過言ではない」(日本法人ローデ・シュワルツ・ジャパンマーケティング部の谷津弦也氏)と言う。なかでも2004年に発売した「R&S SFU」は、1台で世界各国の地上放送、衛星放送、ケーブル放送などで用いられるあらゆる放送方式の放送信号発生機能を備え、変調機能やカラーバーなどのテスト用コンテンツを送信する機能、放送波の伝搬環境を再現する機能などを搭載し「業界標準機として、世界中で使用されてきた」とする。
2013年7月18日に発表した新製品「R&S BTC」は、R&S SFUの後継機と位置付けて製品化。R&S SFUの特徴を継承しながら、昨今の放送業界が抱える課題や将来の放送技術に対応する数多くの新機能を盛り込んだ。
多様な放送方式の登場などにより、対応が煩雑になりつつあるテレビ受信機のロゴ認証試験に向けたテストをより容易に行える機能を強化。500を超える試験の設定を各ロゴ認証試験で要求される試験シナリオに沿って自動実行できるようになった。試験シナリオもGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)上でクリック操作することで、簡単に選択でき、パラメータ入力などの手間もない。なお、R&S BTCのGUIはタッチパネルディスプレイを採用し、操作性も高めている。
これまでは、さまざまなテストを実施した際の判定は、人が試験対象の受信機の映像を確認して行わなければならなかったが、R&S BTCでは人手をかけずに自動判定する「end to end テスト」機能も追加。受信機の映像出力をR&S BTCにHDMI経由で戻し、R&S BTCが基準映像と1枚1枚照らし合わせてエラーを数値化し、定量的な判定を自動で行う。「映像を確認する人によって生じた誤差もなくなり、より正確な試験が行える利点もある」という。
対応する放送方式は、アナログテレビ、ラジオを含め「あらゆる放送方式に対応する」とし、新たにIPベースの放送方式、DVB S2、同T2、同C2、MIMO(Multiple Input and Multiple Output)/MISO(Multiple-Input and Single Output)技術採用放送など4K/8K対応を視野に入れた次世代テレビ放送にも対応した。
さらに、帯域幅の広い放送方式や複雑な試験も行えるよう、信号発生源を2つ搭載した点も新製品の大きな特徴。1つの信号発生源で160MHzの帯域幅を持ち、合計で320MHzの帯域幅を使用できる。2つの発生源を1つと見なして使用することも可能。「これまで隣接するチャンネル間で、ともにハイパワーな信号を発生させてテストしたい場合などは2つの試験器が必要になったが、1台の試験器で試験できるようにもなる」。各発生源には、8チャンネルの妨害信号などを発生できる任意信号発生器を備える。
実環境のシミュレーション機能として、ガウシャンノイズ(広帯域と帯域制限タイプ)、バーストノイズ、位相ノイズの付加も可能。放送送信機で用いられるアンプの線形性、ひずみ補正などのデジタルフィードバックとフィルタの再現機能や、伝搬のフェージングのシミュレーションも行え「受信機のテスト用途だけでなく、放送機器の評価用途などにも販売していきたい」としている。
R&S BTCの価格は、「価格競争が激しく、低価格要求の強い民生市場に対応するため、R&S SFUよりも割安に抑えた」とし、最小構成で約648万円(税込)となっている。
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