熱抵抗回路網法を使うメリットは図5に示す電圧(温度)分布だけではなく、電流(熱流量)を数字で表示することが容易にでき、どこからどこへ熱が流れているかを直感的に理解できる点にあります。「熱の流れのボトルネックはどこか?」を見いだして適切な対策を採ることが可能になるのです。
一方、CFDツールでは熱の流れはコンター表示ですので直感的ではなく、ベテランでないと頭の中で熱の流れをイメージすることは難しいのです。
3回に渡って熱抵抗回路網法について説明してきましたが、モデルを正しく作成すればCFDツールと同等の精度を得ることができることがお分かりいただけたかと思います。
熱抵抗回路網法のお話はここで区切りとさせていただき、次回からは再度、Spiceの新しい応用解析のお話をさせていただきます。
空気への放熱抵抗を決める熱伝達係数Hですが前回、今回の結果から概略値を算出してみましょう。
有限要素法ツールの熱伝導解析モジュールをご使用になる場合に参考になると思います。
ヒートシンクのサイズにもよりますが、大きくなるに従って熱伝達係数Hは小さくなっていきます。つまり放熱が悪くなるわけです。
これらの観点から、熱伝達係数Hの概略値は数十mmのサイズでは10(生地)〜15(黒色)程度と考えれば良く、大きなサイズでは順次この値を低減していくことになります。
参考資料1:CAE懇話会講演資料 07/09/05 第11回中部CAE懇話会資料「CFDによる自然対流のカンどころ」
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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