■AC100Vによる動作確認
独自の部品配置を行った研修生のLED照明回路にAC100Vを接続したところ、数秒間はLEDが明るく点灯したものの、その後、「バッ、バッ、バッ」という音がして、LEDストリング2列分、計24個のLED素子が消灯すると同時にパッケージ内部で破裂が起こった。これには筆者も驚いた。よく見るとLED素子の周辺が少し黒ずんでいることが分かった。
一方、定電流回路に接続したLEDストリングについては、12個のLED素子全てに問題がなかった。そこで、改めてミラー回路に接続したLEDストリングの電源配線を確認したところ、電解コンデンサC3の+側ではなく、FET出力となるC2の+側に配線してあったことが判明した。
■LED破裂の原因
LED素子が黒ずんでいたのは過電力による破損の結果である。LED素子の破損に至る流れはこうだ。まず、電源配線を間違えたことにより、ミラー回路のトランジスタが過電力になり、短絡モードになって破損した。次に、ミラー回路が電流制限を行えなくなるので、LED素子に過電流が流れてしまい、最終的には過電力によってLED素子が破損したのである。
この推定が正しければ、24個のLED素子だけでなく、ミラー回路の2個のトランジスタも破損しているはずである。そこで、トランジスタのCE間をマルチメーターの抵抗モードで測定したところ、100Ω程度で短絡していた。原因推定は正しかったので、破損したLED素子とトランジスタを交換して、LED照明の製作に再度取り組んでもらった。
■LEDのチェック方法
一方、サンプル基板を参考にして製作した研修生の場合、先述したような大きなトラブルは起こさなかった。ただし、LED素子を直列に接続する工程では、極性ミスやLEDストリングの断線などが頻発した。
LED照明は多数のLED素子を直列に接続するので、注意深く作業していても部品の取り付けミスを犯しやすい。そこで、基板に実装されたLED素子の故障や極性の確認を簡便に行う検査方法を紹介しよう。この検査方法ではDCモーターの発電機能を使う。
DCモーターの回転軸を時計回りに回すと図3の赤い端子側に+、黒い端子側に−の電圧が発生する。ゆっくり回すと数V、早く回すと6V程度の電圧になる。このモーターの出力はワニ口クリップで接続した端子を通してLED素子に供給される。モーターの軸を軽く左右に回せば、LED素子の動作や極性を把握できる。なお、モーターの軸を回して重く感じる時はワニ口クリップ同士が短絡している。このDCモーターを治具にして、基板上に実装されたLED素子の破損や極性を確認させた。
その後AC100Vを接続して全てのLEDがめでたく点灯し、可変抵抗で明るさを変更することもできた。これで、ようやくLED照明が完成したことになる。
■フォトセンサーの追加
最後に、図1の回路図内にある追加センサーの部分と同様に、抵抗R13とフォトセンサーQ4を組み込んでもらった。これによって、LED照明は、暗くなると点灯し、明るくなると消灯するようになる。LED照明が使いやすくなるのはもちろんのこと、研修生が研修結果を学校に戻って発表する際に行うデモンストレーションなどで役立ててもらえたのではなかろうか。
研修生は、LED照明の製作を通して、電子回路や電子工作についてさまざまなことを学んだと思う。筆者は、彼らがエンジニアとして成長していくことを楽しみにしている。
次回は、2011年9月から掲載してきたLED照明をテーマとする記事の最終回である。無効電力を有効に使うLED照明の課題の克服と、その製品化に向けた試みについて報告する。
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