この指標は、IGBTデバイスに印加できるドライブ電圧の安全なレベルを規定します。この指標は基本的に、IGBTのゲート酸化物が安全に耐えることのできる最大DC定格を示します。IGBTのゲートはインピーダンスが非常に大きい接点として機能し、ゲートを通じてデバイスの伝導率を制御できます。ゲート酸化物は、ゲート端子とエミッタ端子の間の電界が存在する絶縁障壁に相当し、MOSFETのチャネルを電流が貫通することを許可するかどうかを決定します。
VGE耐圧を上回っている場合は、IGBTのゲート酸化物層が破損する可能性があります。理想的には、ゲート・ドライブ・パルスはオーバシュートのない方形波であるべきですが、実際にはこのような波形が得られることはめったにありません。電流と電圧の過渡特性が生じる可能性が高く、システムに固有の寄生インダクタンスと寄生容量もゲート端子で観測されます。一部のデバイスメーカーの製品データシートでは、単純にゲート電圧のDC制限のみが記載されていますが、それだけでは十分とは限りません。より包括的な規定では、ゲートの過渡パルスの振幅と持続時間に対する制限も含める傾向があります。
ゲートとエミッタの間にある誘電体全体にわたる電圧は重要なパラメータです。この電圧がリークの限界を上回っている場合は、「トラップ」と呼ばれる微小な欠陥が原因であり、電子の流れが誘電体を通過するトンネリングを生じさせるパスが発生し、望ましくない電流の流れが生じる可能性があります。このトンネリング・プロセスが生じた場合は、熱が発生します。この熱発生が長い時間にわたって継続された場合は、酸化層の破壊が生じます。この結果、より多くのトラップが存在する結果になり、全体が急速に雪だるま式に加速します。
より高いゲート電圧を使用する場合は、トンネリング電子に起因する温度上昇が安全なレベルを上回らないように、この現象の持続時間を制限する必要があります。酸化物に加えられる熱が、実証的に酸化物の破壊をもたらす非常に大きな値になる場合は、熱は累積的な効果を及ぼします。従って、過渡現象の時間とデューティ比の両方が製品データシートに記載されています。新しい電力システムを検討するときは、VGEの波形を観測することが重要です。可能な場合は、差動型の電圧プローブを使用し、ドライブ・レベルが、規定された制限の範囲内にあることを確認します。
他の電子部品を使用する場合と同様、IGBTを使用する回路を設計するときに技術者が採用するアプローチでは、信頼性を最大限に高めるために、ストレスが受け入れ可能なレベルにとどまることを保証する必要があります。この記事で説明した3つのパラメータを対象とする総合的なテストを適用すると、特定のIGBTが、想定されるアプリケーション・シナリオに耐えるために必要な特性を実現できているかどうか技術者がよりよく理解できるようになります。
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